Cheap Trickのテキスト書庫

Cheap Trickファンサイトで過去に書いた文を加筆訂正して転載します

【Discography】One On One(1982)

1. I Want You
2. One On One
3. If You Want My Love
4. Oo La La La
5. Lookin' Out For Number One 6.She's Tight
7.Time Is Runnin'
8.Saturday At Midnight
9.Love's Got A Hold On Me
10.I Want Be Man
11.Four Letter Word


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「All Shook Up」に続き、イギリス人のプロデューサー・ロイ・トーマス・ベイカー(The Cars、Foreigner、Free、Queen等)を迎えて制作された6枚目のスタジオ・フル・アルバム。ジョン・ブラントを新ベーシストとして迎えての初のアルバムとなった。

1981年に、アニメ映画「Heavy Metal」に提供した"Reach Out"と"You Must Be Dreamin'"をロイはプロデュースしており、その際にCheap Trickのメンバーと、お互いの都合が合ったらまた仕事をしようと話をしていたという。

重厚で荒々しいギター・リフと、それに呼応したロビンのシャウト・ヴォーカルが全体のトーンを決定づけており、ストレートなロック・チューンがアルバムの軸になっている。

Cheap Trickをへヴィ・メタル寄りのバンドと見なしていた、ロイの方向性が反映された音のテンションは非常に高い。ジョンがベースを弾いているのは"If You Want My Love" "She's Tight" "Saturday At Midnight"の3曲のみで、他の全曲をリックがベースを担当しているが、そうと感じさせないバンドとしての勢いが演奏に漲っている。

曲単体で聴くと、キャッチーな名曲、佳曲が揃っているが、ディスコ調のグルーヴを持った"Saturday At Midnight"や、"The Stroke(ビリー・スクワイア)を想起させる"Four Letter Word"など、チャレンジングな曲が実を結んているとはいえず、アルバムとしての統一感にはやや欠けるのが惜しい。

「All Shook Up」がセールス的に芳しくなく、また評論家の評価も厳しかったことがあり、Cheap Trickにとっては起死回生をかけたアルバムであったが、アルバムは全米で最高位39位(ビルボード200)。パワー・バラードの"If You Want My Love"がHot100で最高位45位。オーストラリアではno.1になるヒットに。セカンド・シングルの"She's Tight"も最高位65位と、まずまずの成果をおさめた。

【Discography】All Shook Up(1980)

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1.Stop This Game
2.Just Got Back
3.Baby Loves To Rock
4.Can't Stop It But I'm Gonna Try
5.World's Greatest Lover
6.High Priest Of Rhythmic Noise
7.Love Comes A-Tumblin' Down
8.I Love You Honey But I Hate Your Friends
9.Go For The Throat
(Use Your Own Imagination)
10.Who'd King
Bonus tracks:
11.Everything Works If You Let It
12.Day Tripper(Live, Short Version)
13.Can't Hold On(Live)
14.Such A Good Girl
15.Take Me I'm Yours

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Beatlesで名高いジョージ・マーティンがプロデュースした5枚目のスタジオ・アルバム。カリブ海にあるモントセラト島のジョージのスタジオでレコーディングされ、イギリスでヴォーカルのレコーディングとミックス・ダウンが行われた。

当時、バンドでの立場に不満を感じていたトム・ピーターソンは、プリ・プロダクションとイギリスでの作業に参加せず、アルバムがリリースされる2か月前の1980年8月にCheap Trickを脱退。難しい状況で作られたアルバムであるが、メンバーのお気に入りとして知られており、バン・E、リック、ロビンはフェイバリットの1枚に挙げている。

リックがピアノで書いた、曲の原型が1970年代初期に作られていたバラード"World Greatest Lover"を除き、収録曲の殆どはこのアルバムのセッションで書かれた新しい曲とされている。

楽曲の方向性は1960年から1950年代へとルーツを辿りつつ、これ以前の4枚のアルバムでも随所で聴けたBeatles的なサウンドを、ジョージ・マーティンの助力でより直接的に表現。1stシングル"Stop This Game"(ビルボードHot100で最高位48位)や"World Greatest Lover"に象徴されるように、オーケストレーションをフィーチュアしたCheap Trick史上随一のドラマティックさを持った曲がアルバムの核を担っている。

「各々の曲がストーリーを持っている」とロビンが評する多彩な楽曲と、キーボードをフィーチュア、エフェクトも随所で活かした実験的なサウンド、ライヴ感のある豪快なギター・サウンドの融合は、ヘヴィでキャッチーな唯一無二のハード・ロックとして結実。ベースもリック・ニールセンが担当した"Baby Loves To Rock"に表れているように、既にメンバー間の信頼関係とケミストリーが揺らいでいる状態ではあったが、ジョージとバンド・メンバーの豊富なアイディアが活かされたアルバムである。ビルボードのアルバム総合チャートで最高位24位を記録した。

【Discography】Dream Police(1979)

1.Dream Police
2.Way Of The World
3.The House Is Rockin'
(With Domestic Problems)
4.Gonna Raise Hell
5.I'll Be With You Tonight
6.Voices
7.Writing On The Wall
8.I Know What I Want
9.Need Your Love
Bonus tracks:
10.The House Is Rockin'
(With Domestic Problems)(Live)
11.Way Of The World(Live)
12.Dream Police(No Strings Version)
13.I Know What I Want(Live)


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トム・ウォーマンがプロデュースした最後のアルバムとなった、4thスタジオ作。当初は1979年2月のリリースを予定していたが「at武道館」の予想外の大ヒットで延期され、同年9月にリリースされた。ビルボード200でチャート最高位6位。

曲の原型("Hot Tomato")が1970年代初期に完成していた"I'll Be With You Tonight"、これも活動初期に書かれたインストゥルメンタル曲"Ultramental"を中間部に使っている"Dream Police"(1stシングル。全米最高位26位)のように、前作「Heaven Tonight」の路線を踏襲したポップなハード・ロック曲もありつつ、曲のバラエティとアレンジがより多様化した作風になっている。

リックのメロディ・センスが遺憾なく発揮されたバラード"Voices"は、2ndシングルとしてリリースされ全米最高位32位を記録。アルバムのクレジットには無いが、この曲ではTOTOスティーヴ・ルカサーアコースティック・ギターを弾き、ギター・ソロも担当している。

トム・ピーターソンは"Voices"のデモ段階でヴォーカルを歌っていたが、これは結局収録されず、"I Know What I Want"で初のリード・ヴォーカルを担当。この曲は現在に至るまでライブで重要なレパートリーとして演奏され続けている。

ロビンのヴォーカル、そして楽器の表現の幅は広がり、音もより重厚に。ディスコ調リズムを取り入れ、ストリングスを配した9分超えの"Gonna Raise Hell" 、7分を超える長尺の"Need Your Love"と、ドラマティックな2曲がA、B面夫々の最後を締める構成が秀逸。実験的でありながらアルバムとしての整合感も失わない、1970年代のCheap Trickの集大成といえる名作だ。

【Discography】Heaven Tonight(1978)

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1.Surrender
2.On Top Of The World
3.California Man
4.High Roller
5.Auf Wiedersehen
6.Takin' Me Back
7.On The Radio
8.Heaven Tonight
9.Stiff Competition
10.How Are You?
11.Oh Claire
Bonus tracks:
12.Stiff Competition
(previously unreleased outtake)
13.Surrender
(previously unreleased outtake)

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前作「In Color」に続き、トム・ウォーマンがプロデュースした3rdアルバム。初来日公演の直前。1978年の4月24日にリリースされた。当初アルバムのタイトルは『American Standard』が予定されていたが変更になった。

初のアメリカでのメジャー・ヒットを記録(ビルボードHot 100で最高位62位)したロック・アンセム"Surrender"をはじめ、"High Roller" "Auf Wiedersehen" "Heaven Tonight"といったオリジナル曲と、ロイ・ウッドのカヴァー"California Man"はバンドの活動初期からライブで演奏されていた曲。残りの半数の曲はアルバムのレコーディング・セッションで作られた。

1stアルバムの陰りのあるアグレッシヴなギター・サウンド、「In Color」のコンパクトにまとまったポップ・センス。両者の美点をバランス良く受け継ぎつつ、ハードでありながらキャッチーというCheap Trickの音楽性がより成熟されたアルバムである。

ロビンが主に書いた曲に、リックとトム・ピーターソンが手を加えた"High Roller"をはじめ、メンバーが共作した曲が半数の5曲。曲調はさらに多様化し、音の面では曲に合わせるようにアレンジも柔軟かつ緻密になった。

ゲストのジェイ・ウインディングの鍵盤をアルバム全編でフィーチュア。ピーターソンはこのアルバムのレコーディングで、初めてトレードマークとなる12弦ベースを使用した。アルバム・タイトル曲"Heaven Tonight"でリックはヘイマーのマンドセロを弾き、チェロとハープシコードが使われている。ロイ・ウッドのオリジナル・バージョンのポップさを活かしつつ見事にCheap Trickハード・ロックに仕上げた"California Manには"、バンドのアレンジのセンスの素晴らしさが表れている。

本国アメリカでのアルバムのチャート成績こそ最高位48位(ビルボード)とまずまずだったものの、音楽面では楽曲のバラエティと洗練、ダイナミズムを同時に手に入れ、着実なステップ・アップを記した1970年代を代表するアメリカン・ロックの名盤といえるだろう。

【Discography】In Color(1977)

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In Color(1977)

1.Hello There
2.Big Eyes
3.Downed
4.I Want You To Want Me
5.You're All Talk
6.Oh Calroline
7.Clock Strikes Ten
8.Southern Girls
9.Come On,Come On
10.So Good To See You

Bonus tracks:
11.Oh Boy(instrumental version)
12.Southern Girls(previously unreleased demo)
13.Come On,Come On
(previously unreleased demo)
14.You're All Talk
(previously unreleased live version)
15.Goodnight
(previously unreleased live version)


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  1977年9月にリリースされた2ndアルバム。(ジャケット裏面に書かれているように、In Colorの後に『And in Black and White』とタイトルが続く。レコード会社の指示で迎えられたトム・ウォーマンがプロデュースを担当している。

  前身バンドSick Man Of Europe時代に原型("I'm A Surprise")が出来ていた"So Good To See You" 当初1stアルバムに収録予定だった"I Want You To Want Me"をはじめとして、1stアルバム同様に収録曲の過半数は既にライブで定番となっていた曲であるが、ウォーマンの洗練された、ポップ・サイドを強調したディレクションにより音の印象が大きく異なるアルバムに仕上がっている。

  メンバーが常々不満を述べているサウンド・プロダクションはダイナミズムに欠け、角のとれたものだが、全曲素晴らしい完成度で曲調のバラエティも豊か。シンプルながら巧妙なフックと構成を持った曲が揃っており、ソングライターとしてのリック・ニールセンの才能とセンスを実感できるアルバムといえるだろう("You're All Talk"と"Southern Girls"はリックとトム・ピーターソンの共作) シングルカットされたtr.4、tr.7と併せ日本では大ヒットを記録し、人気を確立した。

キーボードでジェイ・ウィンディングが参加。"I Want You To Want Me"でジェイ・グレイドンがギター(イントロとアウトロの部分)を弾いている。

1997年にスティーヴ・アルビニのプロデュースで、メンバーの本来意図したサウンドでアルバムの全曲が再録音されたが、その音源はまだ正式にリリースされていない。

 

【Discography】Cheap Trick(1977)

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Cheap Trick(1977)

1.Elo Kiddies
2.Daddy Should Have Stayed In High School
3.Taxman Mr.Thief
4.Cry,Cry
5.Oh,Candy
6.Hot Love
7.Speak Now Or Forever Hold Your Peace
8.He's A Whore
9.Mandocello
10.The Ballad Of TV Violence
Bonus tracks:
11.Lovin' Money (outtake)
12.I Want You To Want Me(early version)
13.Lookout (previously unreleased studio version)
14.You're All Talk (previously unreleased studio version)
15.I Dig Go Go Girls (previously unreleased studio version)

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  Sick Man Of Europe等の前身バンドを経て、1977年にリリースされたデビュー・アルバム。当初メンバーがジョン・レノンにプロデュースを依頼したことで知られているが、オファーは結局ジョン本人の耳まで届かず、ジャック・ダグラス(Aerosmith、Starz、パティ・スミス他)がプロデュースを手掛けることとなった。

  後にポップな"Surrender"や"Dream Police"を演るバンドと同じバンドとは思えない、全編ダークな色彩に彩られたアルバムである。ハード・ロックではあるが様式的なそれでなく、パンク的な要素もあるがパンクではない。アメリカのバンドにしてはイギリスの音楽の影響が強いが、従来のブリティッシュ・ロックとは一線を画す。

  アグレッシブに唸るギター、重厚なリズムが、骨太ながら艶も備えたロビンのヴォーカルと調和してオリジナリティ溢れるサウンドを産み出している。4つの個性のぶつかり合いが生み出す、ヘヴィネスとポップ・センスの絶妙な融合、明るくなりきれないメロディ。Cheap Trickサウンドの基本は既にここで完成されている。

  歌詞も、暗いテーマのもの、ひねくれた内容のものが多く、コマーシャリズムという点ではCheap Trickの70年代のアルバムの中では一番弱いのだが、どの曲もメロディの質は高く、ライヴでアレンジが磨きあげられたのが想像できるキャッチーなコーラスを備えている。リック、ロビン、トムが共作した"Oh,Candy" テリー・リードのカヴァー"Speak Now Or Forever Hold Your Peace"(※一部歌詞を変えている)を除く8曲は、リックが単独で書いた曲。"Mandocello"以外の9曲は、現在に至るまでライブで演奏され続けている。

アルバムの曲順は、オリジナルのLPは"Hot Love"から"The Ballad Of TV Violence"までの5曲が「side A」"Elo Kiddeies"から"Oh,Candy"までの5曲が「side 1」と記されていたが、1998年にリマスター、ボーナス・トラック付きでCDが再発された際に、メンバーが本来意図した"Elo Kiddies"で始まる(side Aが先の)曲順でリリースされた。

~リック・ニールセン、ロック人生、30年を語る~ 東放学園音響専門学校・特別公開講座 Feb,21 2008

□■回想メモ■□

2008年2月。武道館公演を2か月後に控えたリック・ニールセンが一人でプロモーション来日。東放学園音響専門学校で学生さん向けのイベントを行いました。参加者の募集要項がどのようなものだったか、記憶が定かでないのですが、一般の枠で参加させていただきました。その時のレポートです。

 

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  武道館公演決定の興奮も冷めやらぬうちに、リック・ニールセンが単独でプロモーション来日の報が。 しかも、今回は単なるメディア露出だけでなく、東京・新宿にある専門学校、東放学園音響専門学校で"特別講師"として話をするというではないですか。在校生に加え、一般の人も限定で50人招待されたリック先生による"ロック講座"に出席して参りました!

  ステージ上に大きなスクリーンが貼られた地下のスタジオは、東放学園の生徒さん、一般のファンに加えメディア関係者で満員! 立ち見の人も多く開演前から凄い熱気(実際に場内は少々暑く、リックも温度を下げてくれとリクエストし、その後適温に下げられた)

  まず、学校で"ロック史"を担当している酒井努先生が簡単にCheap Trickの歴史を紹介したあと、挨拶代わりにスクリーンに"Never Had A Lot To Lose"のビデオが流されました。もう飽きるほど見たPVですが、この大画面で見ると実にエキサイティング!

  しかし、今日は"講義"ということで興奮は内に秘めて椅子に座ったままこの名曲に浸ります(笑) ゲストコーディネーターの我妻広己(東放学園音響専門学校・講師/音楽評論家)さんと酒井先生がCheap Trickについてひとしきり語り、いよいよリックが登場。モデルを務めているJohn Varvatosの黒いスーツを纏ったリックは、大歓声で迎えられます。BGMは"Clock Strikes Ten"のイントロ…「時計は10時を指した、土曜日の夜~」って、"講義"のはじまりにこの曲は相応しいのか!?(笑)

リック先生…いきなりピックをビュンビュン飛ばしてます!



   <Cheap Trickと日本と武道館について>
  日本の人たちが他の国に先駆けてCheap Trickを認めてくれたから今の僕たちがあるんだ。1st、2nd、3rdと日本でのセールスは上昇し続け、「at Budokan」でCheap Trickサウンドの"本質"といったものを見つけることができた。

Cheap Trick以前にもBeatlesがプレイしたり、ボブ・ディランが武道館のライヴ・アルバムを出したりしているけど、"Cheap Trickが武道館を有名にし、武道館がCheap Trickを有名にした"んだよ。


   <2007年の"Recording Academy Honors"受賞について>
  名誉なことだよ。あのグラミー賞(受賞した)アーティストKanye Westと一緒に受賞したんだからね。

  通訳のお姉さん(※J-WaveのDJの方だそうです。名前失念してしまいました)が訳している間にも、時に机のリバウンドを駆使し(笑)ビュンビュンとピックを放り続けるリック…

酒井「(ピック投げは)1日どのくらい練習しているんですか?」  

「3時間!」


 酒井「それじゃ、ギター練習するより長いですね(笑)」

 「いや、(ギターは)練習しない!」(会場笑)  去年、Beatlesの『sgt.Peppers~』を再現するライヴを演ったんだけど(8月のHollywood Ballのショウのこと)、この準備の為に1967年以来はじめてギターを練習したね」


  <楽器をはじめた頃のこと>
  最初にプレイしたのはドラムだった。レッスンを受けた楽器はドラムが最初で最後だね。最初に組んだバンドのギタリストが良くなかったので、僕がギタリストに移った。両親が二人ともオペラ歌手だったせいか、音感が良くて"Peter Gunns Theme"とか~ドドドド・ドドドド(と口ずさむ)  後に"On Top Of The World"のイントロのヒントになるんだけど~とか楽に耳コピできたよ。


  <1960年代>
  最初に聞いた音楽はブルーズだった。その後にBeatlesに出会って、地元のラジオ曲でジミ・ヘンドリックスの曲を聴いて衝撃を受けて、母親に女性の裸が載ったジャケットのアルバム(「Electric Ladyland」)を買ってきてもらったんだけど、母は恥ずかしい思いをしたろうな(笑)  
 

  <1970年代>
  1970年代中期はディスコ・ミュージック全盛で(難しい時代だった)。でも、僕はダンスができないし(笑)あくまでロック・バンドだ、という気概で活動していた。すると、70年代後期に反動(backlash)が起こってチャート上位にBee Geesの「Saturday Night Fever」とCheap Trickの「at Budokan」が一緒に顔を出すような状況になった。でも、今Bee Geesはどこかへいってしまったけど、僕らはまだここにいる(拍手)


  <ギターについて>
  1978年に初来日した時、雑誌(音楽専科)の企画でギター・デザインのコンテストを行って、当選したギターをグレコに頼んで作ってもらった。エディ・ヴァン・ヘイレンが出てくるより前だけど、もうギターのボディにデザインをしていたよ。今ならフォトショップですぐ作れるだろうけど、当時はなかったからチェックのデザインをつくるのに3M(マスキングテープ)をひとつひとつボディに貼って、上からスプレーして模様を作ったんだ。

  今所有しているギターは500本(驚)  あっ、もう1本あったか(笑・といって、後ろに置いてあったギターを取り出す)  ツアーに必ず持っていくのは5ネック・ギター3本と、ヘイマーのDream Policeのギター。

  ポール・マッカートニーが持っている、世界に3本しかない左利き用のレスポールは、僕が実はあげたんだ。まだお金払ってもらってないけどね(笑)  (ポールは前夫人の慰謝料で大変だろうけど)彼女にお金払う前に、僕にギター代払って欲しいな(笑)


  <レコーディングについて>
  まずリハーサルをしっかりやるね。リハーサルをしながら、曲の良いところ、悪いところを見極める。最近は、マッキントッシュも(曲作りに)良く活用するね。バーニーのドラム・トラックはだいたい3日で録り終えるんだけど、彼が満足して帰ると僕らも嬉しい(笑)


  <4/24・武道館公演について>
  さっきも話したように、Cheap Trickにとって重要なアルバムである「at Budokan」からはたくさんやるし…初来日公演では"Dream Police"演ったっけ? え、演ってない?  "Dream Police"も演るだろうし、とにかく長いショウになるよ!

 
  ここで、酒井先生が今度の武道館でもこの盛り上がりが見られるように…と、初来日時の"Surrender"の映像をスクリーンに流しました。大写しになった当時の自分を見て、恥ずかしそうに頭を抱えるリック!  

「あの時に比べると大分(体形が)大きくなったな!(笑)  それはともかく、ギターはかなり上手くなったよ」 


  <音楽と人生>
  僕はバカ過ぎて、ロックするのを止められない(Too dumb to quit)んだよ(真顔で)  音楽キャリアの最後にプレイしたい曲? そうだな…長い曲をプレイしたいね。凄く長~い曲を(笑)
 
  人に押し付けられて作るのでなく、音楽が好きだから今まで続けてこれたんだ。音楽業界でどんな仕事につくにせよ、大事なのは自分の仕事を好きになること。好きなことを続けるのが重要だね。1stアルバム(の"Daddy Should Have Stayed In High School")で、「俺は30才だけど、16才の気分」って歌ってたけど、今59才の僕は、17才の気分でプレイしてるよ!


  その後、生徒さん、ファンからのリックへの質問コーナーがあり、全員でリックを囲み記念撮影したあとイベント…じゃなかった講義は終了。更にリックは10分ほど残ってファンにもみくちゃになりながら、即席のサイン会も行ってくれました(私は、残念ながらもらえませんでした)。尊敬するリックのユーモア溢れる話を目の前で聞き、また優しさに触れることができて夢のようでした。東放学園の先生、スタッフ、関係者の皆様。貴重な体験をさせて頂きどうも有難うございました!
  

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☆参加者に配布された、入場券代わりのバックステージ・パス