Cheap Trickのテキスト書庫

Cheap Trickファンサイトで過去に書いた文を加筆訂正して転載します

【Discography】Cheap Trick(1977)

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Cheap Trick(1977)

1.Elo Kiddies
2.Daddy Should Have Stayed In High School
3.Taxman Mr.Thief
4.Cry,Cry
5.Oh,Candy
6.Hot Love
7.Speak Now Or Forever Hold Your Peace
8.He's A Whore
9.Mandocello
10.The Ballad Of TV Violence
Bonus tracks:
11.Lovin' Money (outtake)
12.I Want You To Want Me(early version)
13.Lookout (previously unreleased studio version)
14.You're All Talk (previously unreleased studio version)
15.I Dig Go Go Girls (previously unreleased studio version)

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  Sick Man Of Europe等の前身バンドを経て、1977年にリリースされたデビュー・アルバム。当初メンバーがジョン・レノンにプロデュースを依頼したことで知られているが、オファーは結局ジョン本人の耳まで届かず、ジャック・ダグラス(Aerosmith、Starz、パティ・スミス他)がプロデュースを手掛けることとなった。

  後にポップな"Surrender"や"Dream Police"を演るバンドと同じバンドとは思えない、全編ダークな色彩に彩られたアルバムである。ハード・ロックではあるが様式的なそれでなく、パンク的な要素もあるがパンクではない。アメリカのバンドにしてはイギリスの音楽の影響が強いが、従来のブリティッシュ・ロックとは一線を画す。

  アグレッシブに唸るギター、重厚なリズムが、骨太ながら艶も備えたロビンのヴォーカルと調和してオリジナリティ溢れるサウンドを産み出している。4つの個性のぶつかり合いが生み出す、ヘヴィネスとポップ・センスの絶妙な融合、明るくなりきれないメロディ。Cheap Trickサウンドの基本は既にここで完成されている。

  歌詞も、暗いテーマのもの、ひねくれた内容のものが多く、コマーシャリズムという点ではCheap Trickの70年代のアルバムの中では一番弱いのだが、どの曲もメロディの質は高く、ライヴでアレンジが磨きあげられたのが想像できるキャッチーなコーラスを備えている。リック、ロビン、トムが共作した"Oh,Candy" テリー・リードのカヴァー"Speak Now Or Forever Hold Your Peace"(※一部歌詞を変えている)を除く8曲は、リックが単独で書いた曲。"Mandocello"以外の9曲は、現在に至るまでライブで演奏され続けている。

アルバムの曲順は、オリジナルのLPは"Hot Love"から"The Ballad Of TV Violence"までの5曲が「side A」"Elo Kiddeies"から"Oh,Candy"までの5曲が「side 1」と記されていたが、1998年にリマスター、ボーナス・トラック付きでCDが再発された際に、メンバーが本来意図した"Elo Kiddies"で始まる(side Aが先の)曲順でリリースされた。