Cheap Trickのテキスト書庫

Cheap Trickファンサイトで過去に書いた文を加筆訂正して転載します

【Discography】Heaven Tonight(1978)

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1.Surrender
2.On Top Of The World
3.California Man
4.High Roller
5.Auf Wiedersehen
6.Takin' Me Back
7.On The Radio
8.Heaven Tonight
9.Stiff Competition
10.How Are You?
11.Oh Claire
Bonus tracks:
12.Stiff Competition
(previously unreleased outtake)
13.Surrender
(previously unreleased outtake)

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前作「In Color」に続き、トム・ウォーマンがプロデュースした3rdアルバム。初来日公演の直前。1978年の4月24日にリリースされた。当初アルバムのタイトルは『American Standard』が予定されていたが変更になった。

初のアメリカでのメジャー・ヒットを記録(ビルボードHot 100で最高位62位)したロック・アンセム"Surrender"をはじめ、"High Roller" "Auf Wiedersehen" "Heaven Tonight"といったオリジナル曲と、ロイ・ウッドのカヴァー"California Man"はバンドの活動初期からライブで演奏されていた曲。残りの半数の曲はアルバムのレコーディング・セッションで作られた。

1stアルバムの陰りのあるアグレッシヴなギター・サウンド、「In Color」のコンパクトにまとまったポップ・センス。両者の美点をバランス良く受け継ぎつつ、ハードでありながらキャッチーというCheap Trickの音楽性がより成熟されたアルバムである。

ロビンが主に書いた曲に、リックとトム・ピーターソンが手を加えた"High Roller"をはじめ、メンバーが共作した曲が半数の5曲。曲調はさらに多様化し、音の面では曲に合わせるようにアレンジも柔軟かつ緻密になった。

ゲストのジェイ・ウインディングの鍵盤をアルバム全編でフィーチュア。ピーターソンはこのアルバムのレコーディングで、初めてトレードマークとなる12弦ベースを使用した。アルバム・タイトル曲"Heaven Tonight"でリックはヘイマーのマンドセロを弾き、チェロとハープシコードが使われている。ロイ・ウッドのオリジナル・バージョンのポップさを活かしつつ見事にCheap Trickハード・ロックに仕上げた"California Manには"、バンドのアレンジのセンスの素晴らしさが表れている。

本国アメリカでのアルバムのチャート成績こそ最高位48位(ビルボード)とまずまずだったものの、音楽面では楽曲のバラエティと洗練、ダイナミズムを同時に手に入れ、着実なステップ・アップを記した1970年代を代表するアメリカン・ロックの名盤といえるだろう。