Cheap Trickのテキスト書庫

Cheap Trickファンサイトで過去に書いた文を加筆訂正して転載します

【来日公演2003年・その1】Summer Sonic 2003(Tokyo) at Chiba Marine Stadium 8/2/2003

□■回想メモ■□
2年ぶりの来日となったCheap Trick目当てに、初めて参加したサマー・ソニック。ライブの興奮冷めやらず、帰りの電車内で一気にライブリポートを書いたのをよく覚えています。久々に読み返したら、やはり勢いだけで書いた酷い文章だったので、全体的に書き直しました。

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まず何より注目していたのはセット・リストだ。これだけ出演アーティストの平均年齢が若く、且つ勢いのあるバンドばかりのラインナップの中で、更に1時間に満たないセットの中で、最早超ベテランといえる域に達したCheap Trickがどう存在感をアピールすることができるだろうか。

私は選曲さえ間違えなければ、Cheap Trickに興味のない人も必ず引き付けることができると確信していた。そして、これがもうほとんど文句のつけようがない選曲、内容であったのだ。 Cheap Trickの楽曲中、特に即効性のあるパワフルでキャッチーな曲を中心に据え、最新作「Special One」からも4曲披露。アルバムの多様性と、ロックバンドとしてのCheap Trickの性格、そして現役ぶりを同時にアピールするバランスのよい構成により、短いながらも内容のギュッと詰まったライヴを楽しめた。

14時35分、昨日までのはっきりしない気候が嘘のように晴れ上がった空の下、定時にメンバーがステージに登場。この暑いのにビシッと赤のスーツで決めたリック、麦藁帽子(?)に鉄腕アトムのTシャツを着たトム。少し以前よりふっくらしたロビンは白のスーツ(途中で脱いでTシャツ姿に)に、帽子を目深に被っていた。 オープニングは定番の"Hello There" 2曲めの"Big Eyes"は少々意外な選曲だったが、コンパクトでポップでハードな、Cheap Trickの魅力をダイレクトに伝える曲なので、悪くなかったと思う。

前・後ろでブロック(スペース)を区切られたマリンスタジアムの広いグラウンド。私が見ていたのはステージに近い方のブロックの後ろの方であったが、Cheap Trick出演時は客はまだ7割の入りで、リラックスした体勢で観戦することができた。 自分の周辺のオーディエンスの様子を窺うことも出来たのだが、恐らく今日初めてCheap Trickを見たであろう10代のファンも、ステージに集中しているのがわかる。

3曲めは「Special One」からの日本での1stシングル"Too Much" この曲に関しては、凄く聴きたいけれど、果たしてサマソニのワクの中に組み込むのはどうだろうか‥と少々複雑な気持ちがあったのだが、3曲めという配置がよく、セット全体の流れにうまくハマっていた。それにしても、改めて"Too Much"は素晴らしい曲である。CDのバージョンももちろん良いが、ライヴでダイナミズムが増したサウンドも最高だ!

4曲めは、やはり前半で登場した"I Want You To Want Me" イントロの「I Want You‥‥To Want ME!!」のロビンの掛け声にいつもより力がこもってる! サウンド面でも、構成/メロディの面でもCheap Trickの魅力が溢れたこの楽曲の印象的な旋律に、皆大盛り上がりで手を振り上げる「Cryin' Cryin'~♪」

そしてこの後、セット中盤の流れはまさに圧巻だった。私の後ろで見ていた、10代の男の子の口から何度「マジでスゲエ‥‥」という言葉が洩れたことか(笑)

個人的に、"Anytime" "The Ballad Of T.V. Violence" "Best Friend"といったCheap Trickの重厚な側面をアピールする曲は最低一曲は組み込んでほしいと思っていたのだが、やってくれました。「Special One」におけるハイライトの1曲といえる"Best Friend"だ! ドゥーミィと表現してもおかしくないような、まるで深海をイメージさせる重々しいイントロに、奇妙 という表現をしたくなるリックのコ-ラス。アタックの強いトムのべース。"狂気さ"さえ感じるロビンのダイナミックなヴォーカル。サビでの爆発力は、アルバム・バージョン同様、いやそれ以上にライブ・バンドとしてのポテンシャルを十二分にアピールしていた。

圧倒的な"Best Friend"が終わると、これは何が何でもやって欲しかった"Clock Strikes Ten" キャッチーなイントロに、疾走感と楽しさを有したこの3コードの名曲は、場内の空気を更にヒートさせた。

続いたのは再び「Special One」から"My Obsession" これも嬉しい選曲。「Cheap Trick'97」アルバムのデモ集で、またプートのライヴ音源でここ数年聴きまくった曲だが、ライヴだとまた格別である。この曲での場内の盛り上がりは比較的静かであったが、このさりげない、しかし印象的なメロディが心に刻まれたオーディエンスも少なくないに違いない。

次は、これを演らなければ始まらない。代表曲中の代表曲"Dream Police" キャッチーを極めたメロディ。Cheap Trickらしい溌剌としたサウンドとリズム。色褪せることのない不変の名曲にあわせ、ファンはもちろんステージ袖でずっとライヴを観戦していたDatsunsのメンバーも歌いまくる(笑)

"Ain't That A Shame"‥‥これはちょっと意外な選曲だな‥と思っていると、ここであるハプニングが発生。とてもライヴに集中できる状態でなく、しばらく心ここにあらず状態になってしまう。Cheap Trickのオリジナルではないが、この曲の持つ楽しい雰囲気は広い空の下のフェスティバルに似合っていた。

続く代表曲"Surrender"の演奏の最中も、集中できずまだ頭が少しぼんやりしていたのだけれど‥‥しかし、今更という話だが"Surrender"というのは大した曲だ。シンプルな構成でありながら、中に詰まっているもののいかに濃いことか。Cheap Trickの、というよりロック史に残る名曲ということが出来るだろう。流石に、Cheap Trickは知らないけれどこの曲は聴いたことがある、という人も多いようで、アリーナの熱気は一気に上昇する。

そして時間はあっという間に過ぎ‥‥ラストは、「Special One」のオープニング・チューン"Scent Of A Woman"! 最後を新曲で閉めたのは大変に有意義だったと思う。Cheap Trickのアルバムを聴く通りの"あの音"でソリッドに激しく畳み掛けるリックのギター。音の粒立ちがはっきりとした、そしてパワフルなトムのべース。リズムを支える切れのよさと重さを兼ね備えたバー二ーのドラムス。マイクを両手でしっかり持ち、凄まじいとしか表現できないシャウトを響かせるロビン。ライヴ・バンドとして慣らすCheap Trickならではの、凄みが炸裂したエンディングだった。

フェスティバルの一部である、50分に満たないショウではあったが、Cheap Trickの魅力を伝えるには十分なエキサイティングなライヴだったと思う。

最後に、決して良好とは言えない会場の状況下で、あれだけクオリティの高いいつも通りのサウンドを作り出していたバンドのクルーの皆さんにも感謝します。

set list:
1.Hello There
2.Big Eyes
3.Too Much
4.I Want You To Want Me
5.Best Friend
6.Clock Strikes Ten
7.My Obsession
8.Dream Police
9.Ain't That A Shame
10.Surrender
11.Scent Of A Woman