Cheap Trickのテキスト書庫

Cheap Trickファンサイトで過去に書いた文を加筆訂正して転載します

【来日公演1999】Live at Nakano Sun-Plaza 10/15/1999

□■回想メモ■□
ライブアルバム「Music For Hangovers」を従えての1999年の来日公演。セットリストは既出曲ばかりでしたが、オープニングでI Want You To Want Meを演奏したり、ポール・ギルバートがゲストで登場したり、見(聴き)どころは多かったです。これが恐らく初めて書いたCheap Trickのライブリポート。あちこち修正しました。

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もしかしたら新曲もやってくれるかな…との期待もあったが、最新作「Music For Hangovers」がライヴ・アルバムということもあり、やはりセット・リストに組みこまれた曲は既にリリ-スされた曲ばかり。また、今日はショ-の時間が比較的短い(80分前後)ので、終演後には一部の客からもっとやってほしいと不満の声も聞かれた。

バンド結成から25年、「At Budokan」リリ-ス20周年を記念して何か特別な演出があったかといったら…何もない。(ポ-ル・ギルバ-トの飛び入りという嬉しいハプニングはあったけれど) 

かといってライヴがつまらなかったといえば決してそんなことはない。Cheap Trickの多様性が80分・18曲の中に凝縮された、内容の濃いライヴだった。確かに、彼らは何も変っていない。普段通りシンプルなセットで、控えめな演出で、堅実な演奏で、良い曲をパワフルに、ラウドに、時に静かに、そして楽しく聴かせてくれるリック、ロビン、バ-ニ-。"いつもの"Cheap Trickがそこにいた。少なくとも、私はそれで十分満足だった。

いきなり"I Want You Want Me"で始まるという意表を突いたオ-プニングに、観客は沸き返る。"初期バ-ジョン"のアレンジを取り入れ、スピ-ド感が増しているので1曲めに演奏されても特に違和感はない。

"Come On, Come On" "Clock Strikes Ten"と、2ndアルバムから3曲連発し、リックの「今日は『Music For Hangovers』の曲をたくさんプレイするよ」というMCを挟み、"I Can't Take It" "He's A Whore"と続く。ここまでの流れはほんとうにあっという間で、コンパクトでキャッチ-な曲が矢継ぎ早に繰り出され、とにかくテンポが良い。

特にロビン作曲の"I Can't Take It"は、7年前に会場も同じ、ここサンプラザで披露された時はまったくといっていいほど反応がなかったのだが、今回は驚くほど受けており、見事に観客の熱気を持続させることに成功した。

そしてその熱気はスペシャル・ゲスト、ポ-ル・ギルバ-トの登場でさらに高まる。ポ-ルは、トムの歌う"I Know What I Want"でギタ-を弾き、コ-ラスをとった。私の席が後ろの方だった為、ポ-ルの表情までは見る事ができなかったのは残念だ。

唯一疑問に残ったのが「Cheap Trick」(1996)からの選曲。正直なところ、前回の来日でもプレイした"Wrong All Along" "It All Comes Back To You"よりは、"Carnival Game" "Say Goodbye"あたりが聴きたかった。ただ、パンキッシュな"Wrong All Along"は"Clock Strikes Ten" "Never Had A Lot To Lose"などと同様にライヴ向きの曲であることは確かで、実際にオ-ディエンスの反応も上々だった。

13日の渋谷公会堂公演ではプレイされた名バラ-ド"Take Me To The Top"がカットされたのも実に残念。しかし、ロビンの素晴らしくエモ-ショナルなヴォ-カルに圧倒される"Ghost Town" 久々にライヴで聴く"The Flame"、そしてCheap Trickのメロウ・サイドを代表する名曲中の名曲"Didn't Know I Had It"までやってくれれば、もう言うことはない。

"Southern Girls" "Surrender"と続き、大盛り上りのまま本編は終了。アンコ-ルは当然"Voices" に"Dream Police"、あとは"Auf Wiedersehen"やって終りだな~とちょっと油断していたら…。あれっ、このイントロは…このミディアム・テンポの重いリフは…? あっ、"The Ballad Of TV Violence"か! う~ん、これは予想していなかった。でも、この緊張感のある曲を最後に持ってきたのは良い選択だったと思う。'99年の今聴いても新しさを感じさせる、凄くク-ルな曲だ。やはり彼らのデビュ-作は、時代を先取りしていたんだなあ。ポップな曲、ヘヴィな曲、美しいバラ-ド。様々なタイプの曲を網羅した、構成のしっかりしたライヴだった。

 私の通っている英語学校のアメリカ人講師によれば、Cheap Trickは既にアメリカでは"Classic"なロックバンド(!)とみなされているそうだ。 ある意味ではそうなのかもしれない。しかしCheap Trickは未だにとても新鮮で、間違いなく"現在"を生きている。そう改めて実感した今回の来日公演だった。

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set list:
1.I Want You To Want Me
2.Come On, Come On
3.Clock Strikes Ten
4.I Can't Take It
5.He's A Whore
6.I Know What I Want
7.If You Want My Love
8.Never Had A Lot to Lose
9.Ghost Town
10.It All Comes Back To You
11.The Flame
12.Didn't Know I Had It
13.Southern Girls
14.Surrender
encore:
15.Voices
16.Dream Police
17.The Ballad of T.V. Violence (I'm Not The Only Boy)
18.Goodnight Now